2025年秋公開の映画『ブラック・ショーマン』
本作は原作・東野圭吾先生が福山雅治さんの「ダークヒーローを演じてみたい」という言葉から着想を得たストーリーです。
強烈な登場人物ブラックショーマンは、まさに福山雅治さんそのもの。
原作を読んでいても、福山雅治さんの姿で映像が浮かんできます。
今回は映画『ブラック・ショーマン』を原作からネタバレ考察していきたいと思います。
原作未読やこれから映画を鑑賞する方はネタバレにご注意ください。
映画『ブラック・ショーマン』とは？
映画『ブラック・ショーマン』は2025年9月12日（金）に公開されます。
原作は東野圭吾先生で、シリーズは累計80万部を突破しています。
| 公開日 | 2025年9月12日（金） |
| 監督 | 田中亮 |
| 原作 | 東野圭吾「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」 |
| 脚本 | 橋本夏 |
| キャスト | 神尾武史/福山雅治 神尾真世/有村架純 |
| 配給 | 東宝 |
映画『ブラック・ショーマン』あらすじ（ネタバレなし）
コロナ禍に結婚を控えた神尾真世のスマートフォンに、警察から1本の電話が入った。
かつて中学校教師をしていた父・神尾英一が殺害されたという。
第１発見者は真世の同級生。
真世の同級生たちは、教師だった英一を交えて同窓会をおこなう計画を立てていた。
警察からの連絡を受けた真世は、コロナ禍で観光客の遠のいた故郷へ帰る。
父の亡くなった状況を聞いた真世は、警察に案内されて生家に確認へ。
そこで何年も音信普通だった叔父・神尾武史と再会する。
元マジシャンの武史は、警察はたとえ犯人が逮捕されても遺族が欲しい情報をすべて与えてはくれない。
自分の手で犯人を見つけるという。
鮮やかなマジックと巧みな嘘を織り交ぜた誘導尋問を武器に、武史と真世は犯人を突き止めることができるのか？
映画『ブラック・ショーマン』は続編をする？
映画『ブラック・ショーマン』は「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」が原作。
実はシリーズとして続編「ブラック・ショーマンと覚醒する女たち」が出ています。
ただ続編は短編集なので、ドラマの方が向いているかも？
しかし、今回の映画の興行収入によっては、ヒットすればガリレオシリーズのように続編を製作する可能性は大いにあると思います。
『ブラック・ショーマン』ネタバレあらすじ
結婚式を2か月後に控えた神尾真世は、次の日曜日におこなわれる中学の同窓会に出席するか悩んでいた。
同窓会には父・神尾英一も出席するからだ。
中学時代の真世は、父であり生徒への指導に熱心な教師・神尾英一の影響で少なからず息苦しい生活を強いられていた。
『神尾先生の娘』という肩書は、父の顔に泥を塗るような行動はできない。
何かあれば真世が父に告げ口をしたと憶測される。
そのため、無口で地味な優等生を演じ続けなければならなかった。
当時の真世には、ただ一人心の支えになっていた人物がいた。津久見直也だ。
誰に対しても平等で人気者だった津久見は、教師を父にもつ真世の境遇を励まし続けた。
しかし、彼は白血病で中学3年の時にこの世を去る。
今度の同窓会では津久見の追悼会もおこなうという。
ただ津久見のいない今、同窓会に出席すれば当時の苦い思い出がよみがえるに違いない。
翌日、真世のスマホに知らない番号から着信が入る。
神尾英一が何者かに殺害された。第１発見者は同級生の原口だという。
通報を受けた真世は帰郷。
以前は観光地としてそれなりに栄えていた故郷は、コロナを境にすっかり寂れていた。
遺体安置所に出向くと、警察は父が倒れていた状況を真世に簡単に説明する。
その後、真世にもアリバイを尋ねた。
遺族として警察に聞きたいことは山ほどあったが、ほとんど答えてはもらえなかった。
次の日、遺体発見現場となった正家を訪れると、何十年も音信普通だった叔父・神尾武史に再会する。
かつてラスベガスでマジシャンとして名をはせていた武史。
警察のスマホから情報の一部を入手した武史は「俺は犯人逮捕を警察に任せっきりにするのではなく、できれば自分の手で真相を突き止めたいと思っている」と真世に告げる。
真世も真相を突き止める手伝いをしたいと伝えた。
真相を追うなかで、真世の同級生たちが事件発生前に怪しい行動をしていたことが分かる。
真世の故郷では、同級生・釘宮克樹が故郷を舞台にしたマンガ『幻脳ラビリンス』を大ヒットさせていた。
そして柏木は『幻脳ラビリンス』の主人公宅を再現する「幻ラビ・ハウス」を計画するがコロナ禍で計画が立ち消えになっていた。
そこで『幻ラビ』を使用した次なる計画を実行するため、資金調達で信頼を寄せる地方銀行勤務の牧原とともに奮闘していた。
酒屋を営む第一発見者の原口は、『幻ラビ』の主人公名を新酒の商標に。
居酒屋を営む沼川は、お店を「幻ラビ・ハウス風」に改装することを計画していた。
ただ、『幻ラビ』使用に関しては問題が一つ存在する。
売れっ子漫画家になった釘宮と行動をともにする、広告代理店勤務・九重梨々香の存在だ。
同級生たちは九重を丸め込もうと、神尾に相談を持ちかけていた背景が浮かんできた。
神尾英一の死亡推定時刻は3月6日（土）東京から実家へ戻った午後11時頃とされる。
そこまでの同級生たちの行動を振り返ると、以下の通り。
| 2月24日（水） | 桃子が神尾英一の家へ。 英一は津久見直也追悼会でサプライズを用意していた。 |
| 2月25日（木） | 九重と釘宮が英一の家へ。 （『幻ラビ』使用を企てる柏木たち対策） |
| 2月27日（土） | 杉下が英一に同窓会挨拶の電話。 英一から東京で静かに話せるホテルがないか尋ねられる。 |
| 3月1日（月） | 同窓会の打ち合わせ （出席者：桃子・杉下・牧原・沼川） ※出席者はこのとき、英一が東京へ行くことを杉下から聞かされた |
| 3月6日（土） | 英一が午後6時に「東京キングダムホテル」に行く。 午後11時帰宅 直後に殺害される ※英一が東京に向かったのは、桃子が別居してる池永良輔（神尾英一のかつての教え子）に、桃子への現在の気持ちを確かめにいくためだったと判明。 |
『ブラック・ショーマン』結末
日曜日の同窓会後、武史の指示で疑わしき同級生たちが残された。
桃子・九重・釘宮・杉下・牧原・沼川・柏木を含む同級生たち。
神尾英一の姿に扮装した武史は、手紙に関する授業を始める。
津久井直也が中学2年のときに書いた『友達』についての作文。
武史は釘宮に作文を読むよう指示する。
そしてショータイムは第2幕・全身黒づくめになった「黒の魔術師（武史）」によるHRが始まった。
武史は英一のお通夜とお葬式に参列した人のお焼香時の映像を流す。
犯人は心理的に遺体から目をそらしてはいけないと考える。
そして遺体と対面したあと遺影と対面するが、遺影は目を開いている。
やましい気持ちがあれば目を開いている遺影を真っすぐ見つめることは難しい。
その心理をついて、武史は遺影の英一の目にカメラを仕込んでいた。
武史は遺影から目をそらした牧原に疑問を投げかける。
そして、その流れから遺影を直視していたが、事件当日に誰かと一緒にいたアリバイがあるのにプライバシーの観点から誰と一緒にいたかを明かさない九重にも問いかける。
2人の怪しい行動の真相は以下の通りだった。
| 柏木＆ 牧原 | 牧原は以前、英一から資産管理に困っていた森脇和夫を紹介された。 森脇は、若い頃にマネーロンダリングで不正入手した1億円相当の資産がある。 しかし家族に遺すのは罪悪感があるので、慈善団体に寄付したいと話した。 そこで牧原は『幻ラビ・ハウス』への出資を提案する。 森脇は地元のためになるならと快く了承する。 しかし家族には秘密にしたいので、出資者として自分の名前は載せたくない。 そこで出資ではなく会員権という形をとることにした。 しかし、コロナ禍の影響で『幻ラビ・ハウス』は計画途中で中止。 森脇も新型コロナで亡くなってしまった。 森脇の秘密の口座を解約する前だった。 本来なら会員権は返金の義務がある。 だが、森脇は1億円相当の資産を家族に秘密にしたいということだったので、返金するのは難しい。 そこで柏木と相談して、森脇の資産は次の計画に回すことにした。 （この間、森脇の娘・敦美が父の口座から預金が消えていることに気付き、英一に相談を持ちかけていた） |
| 杉下＆ 九重 | 九重は事件当日、杉下海斗とホテルで密会していた。 しかし杉下は既婚者のため、アリバイの相手として伝えるわけにはいかなかった。 杉下とは『幻ラビ』オンラインゲーム化に関するビジネス・パートナーだった。 |
桃子と沼川にはアリバイがある。
そして遺影を直視できなかったもう一人の人物、真犯人は釘宮克樹だった。
話はさかのぼり中学3年の頃、釘宮は津久見の母からA4サイズの封筒を受け取った。
中に入っていたのは魅力的なストーリーが10作程並んだアイデアノート。
それは漫画家を夢見ていた津久見が、生前書き溜めていたものだった。
私立大学に進んだ釘宮は漫画家としてデビューを果たす。
しかしストーリーがあと一歩ということで、連載をもらえない悶々とした日々を過していた。
そんな折、釘宮は津久見のノートを思い出す。
あらためて津久見のノートを見ると、どのアイデアも魅力的。
なかでも『ゼロワン対戦』は素晴らしかった。
自分のアイデアが浮かばないまま、担当者から次の作品の構想について催促の電話が入る。
そこで釘宮は津久見の『ゼロワン対戦』のアイデアを伝えてみることにした。
担当の反応は想像以上で、『ゼロワン対戦』を『幻脳ラビリンス』として連載することが決定した。
『幻脳ラビリンス』はアニメ化するほどの大ヒットを記録。
釘宮はインタビューにも『幻脳ラビリンス』が自分のアイデアだと語っていた。
神尾英一から連絡があったのは、同窓会＆津久見の追悼会がおこなわれる週の3月2日。
釘宮に頼みたいことがあるということで、翌3月3日（水）に英一宅を訪れた。
英一は津久見の追悼会で、津久見の作文を披露してもいいか？と尋ねてきた。
中学3年になってすぐに出た宿題の作文「将来の夢」
津久見はそこに漫画家になりたい旨と、ゼロワン対戦（幻脳ラビリンスの原案）の構想を記していたのだ。
英一は、津久見が釘宮に『ゼロワン対戦』をマンガ化するよう託したと勘違いしていた。
『幻脳ラビリンス』は固い友情によって描かれた共作なのだと。
勘違いした英一は、追悼会でぜひ2人の美談を伝えたいと頼んできた。
釘宮はその場を誤魔化して辞退するが、英一宅にある津久見の作文を処分しなければならないと考える。
作文だけを盗み出すのは怪しまれる。
それなら家ごと放火してしまえばいいと考えた。
3月6日夜、釘宮は留守のはずの英一宅を訪れる。
ところが英一はすでに帰宅していた。
慌てた釘宮は、放火用に持っていたタオルで英一の首を絞殺した。
後日談として、お通夜とお葬式で牧原と釘宮が遺影から視線を外している映像は、武史が加工したものだったと明かされる。
加工前の映像では、2人ともしっかり遺影を見つめていたのだった。
『ブラック・ショーマン』感想
『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』は、犯人捜しという点ではそこまで複雑な話ではありませんでした。
なんなら大ヒット漫画家と亡くなった同級生という設定で、『幻脳ラビリンス』は盗作なんじゃない？と、ずっと疑い続けていた私。
東野圭吾先生好きの読者の方は『悪意』が頭に浮かんでいた方もいたのでは??（私はそうでした…笑）
でも、さすがは東野先生‼
ストーリーの大筋というよりも、視点を変えたミステリーの面白さでグイグイ読ませてくれました。
元マジシャンの主人公が警察のスマホから情報を盗んだり、言葉巧みにハッタリで関係者から情報を手に入れていく。
今までにない独自路線の探偵手法がとても魅力的でした。
そして何か過去に秘密を抱えた人物像というのも興味深い。
加賀恭一郎がシリーズを通して父との確執を抱いていたように、恐らく今後明かされるであろうマジシャン時代の武史にも期待したいです。
『ブラック・ショーマン』考察
神尾真世は結婚したのか？
『ブラック・ショーマン』では、真世が健太と結婚したのかが描かれていません。
ただ、恐らく結婚は白紙に戻したのではないかと考えます。
健太の元恋人から届いた嫌がらせメールで、結婚を前向きに考えられなかった真世。
健太が希望して子どもをおろさせた過去があること。
次に子どもができたら産んでもいいと言われたが、健太にはその意志がなかったこと。
そのメールが頭にあったから、冒頭の真世は結婚後に子どもをどうするか？にこだわっていたのだと思います。
それに対して健太は「別にいいじゃないか。子供ができなくたって。それならそれで、二人だけの結婚生活を楽しめばいいわけだし」と取り合いません。
つまり健太は、元々子どもが欲しくはないのだと思います。
元恋人からの嫌がらせメールを婚約中の健太に相談できないことも、すでに問題だとは思います。
しかしそれ以上に、『子どもを望む真世』と『子どもを望まない健太』は結婚する上で越えられない価値観があります。
たとえ結婚したとしてもうまくいかない。
桃子の別居を知り、武史からのアドバイスを受けた真世は別れを選択したのではないでしょうか。
桃子と池永良輔夫妻はどうなったのか？
恐らく、神尾英一が亡くなる直前まで幸せを願っていた池永夫妻。
しかし現実的なことを考えると、遅かれ早かれ二人は別れを選択するんじゃないかと思いました。
なんといっても良輔には相手を気遣う気持ちが全くない。
食事を出すタイミングがバラバラだとか、部屋が片付いてないって、桃子も仕事をしてたんだから自分がやったっていいんですよね。
さらに子どもが生まれても育児を手伝う気も一切ない。
なんなら子どもにも無関心。
離婚についても体裁からしたくないだけ。
桃子は自分ができないから悪いんだと考えてますが、いや良輔は何してんだ？です💦
いくら恩師の神尾先生と話したからといって、良輔のすべてが生まれ変わるとは思えず。
円満に別れることが二人の幸せのような気がします（苦笑）
武史はなぜ「サムライ・ゼン」と呼ばれることを嫌悪しているのか？
何十年以来の再会を果たした真世と武史。
武史が警察の小暮からスマホを借りた（勝手に拝借した）手口に気付いた真世が「さすがはサムライー」とかつての名前を告げようとしたところ
「その名を口にするな」と武史は睨みつけます。
「サムライ・ゼン」はマジシャン時代の芸名ですが、『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』では嫌悪している理由が明かされていません。
「サムライ」は、武史がラスベガスで日本刀を使ったマジックをしていた芸風が由来かと思われます。
「ゼン」は無我の境地で悟りを開く「禅」なのかな？
現在は日本でバーを経営していることから、恐らくラスベガス時代のマジックに何か原因があるのかもしれません。
『幻ラビ』は津久見直也との共作にできなかったのか？
ここが本当に悔やまれるし、なぜ釘宮は初めから共作にしなかったのか。
釘宮は津久見からのアイデアノートを受け取ったとき、たとえ家が火事で燃えてもこれだけは持って行こうと考えていたほど大切にしていました。
津久見のことを大事に思っていたのは本当だと思います。
それなら担当者に話して、原案/津久見直也・イラスト/釘宮克樹にすれば問題なかった。
恐らく30巻超えの構想すべてはアイデアノートになかっただろうし、マンガにしてヒットさせた釘宮の才能は本物だったはず。
でも、初連載をする釘宮には原案/津久見直也と記載する自信がなかったのかなと思います。
大事な友人の名前と共作にして、連載を続けられるかも分からないマンガをスタートさせられるのか？
そして、ある程度成功してきてからは欲が出た。
原案は津久見だが、ここまでヒットさせられたのは自分の力あってこそ。
津久見はもういないんだから、自分の案だと伝えても問題ないのではないか？と。
自分だけに託されたはずのアイデアノートの中身を知っている人が、他にいるとは思わないですよね。
津久見としても、亡くなってから釘宮だけにアイデアノートを託している。
自分が漫画家になりたかったんだと釘宮に伝えたかったんでしょうか？
もしかしたら、自分が認めていた釘宮に作品を見て欲しかっただけかも。
でも、津久見は釘宮が漫画家になることを信じていた。
だからこそ、いつか自分の意思をついで釘宮が作品にしてくれることも考えたのではないかなという気もします。
津久見も自分のアイデアノートが友人を苦しめ、恩師であり大好きだった人の父親の命を奪う結果になったなんて浮かばれないですよね。
まとめ
映画『ブラック・ショーマン』を原作からネタバレ考察してきました。
警察でも科学者でもない、元マジシャンという経歴を生かした仕掛けが面白い新シリーズ。
福山雅治さんの演じるブラック・ショーマンを楽しみにしたいと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
